「ウクライナの国民的アーティストが、ボランティアで来日したいと言っている」
それを聞いたのは夏のことでした。全心連ウクライナ「心のケア」交流センターがつながりを持つウクライナの方々は、関東近郊だけで約450名。心のケアの催しには開設からのべ850名を超えるウクライナの方々が参加しました。その様子はウクライナ本国のメディアでも取り上げられ、高い評価をいただいていたことも知り、私たちとしては驚いていたところでした。
ウクライナの国民的アーティスト、KAZKAは、日本にいるウクライナの方々を元気づけたいという意向であるとのこと。そして、ウクライナでの核の問題もあり、KAZKAからは広島の視察希望もありました。KAZKAの思いを知れば知るほど、なんとか実現できないものかと対応を模索し続けてきました。KAZKAが日本に来てくれるなら、ウクライナの方も、ウクライナを支援してくださる日本人サポーターも一緒に、音楽を通した文化交流と心のケアを行いたいと考えました。
KAZKA来日にあたっては、日本での費用を全心連ウクライナ「心のケア」交流センターが負担し、日本での滞在をフルサポートすることになりました。まずは、外務省、在日ウクライナ大使館の後援をいただき、東京・渋谷で「KAZKA来日文化交流会」を開催することになりました。10月10日、ウクライナ各地への爆撃が起こった時期でもあり、ウクライナから避難されてきた方々や在日ウクライナの方々はもちろんのこと、日本にいる多くの方々が心を痛めていました。音楽を通して、ウクライナの方々のつらさが少しでも和らげば・・・と、非常に限られた時間の中でしたが、急ピッチで準備を進めていきました。
KAZKA/エレクトロ、フォーク、ポップスの要素を融合させたウクライナの代表的な音楽グループ。ボーカルのオレクサンドラ・ザリツカを中心に2017年に活動をスタート。2018年発表の「プラーカラ」がShazam(楽曲検索アプリ)ワールド・チャート1位となり、世界的な知名度を得た。
◆1日目 10月18日 文化交流会
KAZKAが来日したのは10月18日当日。非常に限られた時間であったため、1日目・2日目とも開始直前まで、サウンドチェック・リハーサルを行う形となりました。みなさん、お待たせしてすみません!
開会のご挨拶の後、外務大臣政務官 吉川ゆうみ様よりご挨拶をいただきました。引き続き対露制裁及びウクライナ支援を強力に推進するとともに、祖国を追われたウクライナ避難民の方々が安心した生活を送れるよう、これからもウクライナの人々に寄り添った支援を実施していくとお話しくださいました。ウクライナの方々の心に深く響くメッセージであり、場内からは感動の拍手が起こりました。吉川政務官はご挨拶の後、KAZKAとお話をされ交流をはかられました。
続けて、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使よりご挨拶をいただき、ウクライナの方々もとても勇気づけられていたようです。シンガーのミラさんによるウクライナ国家の後、KAZKA登場、トークライブが始まりました。
KAZKAからご挨拶、日本に来ようと思った背景などお聞きし、全心連ウクライナ心のケア交流センターの活動報告を行いました。また、ギタリストSUGIZO氏よりビデオメッセージをいただいており、皆様にご紹介させていただきました。
子どもたちからの花束贈呈の後、ウクライナの民謡で”私たちは決して負けない”という気持ちを表現している曲「赤いカリーナは草原に」をKAZKAと一緒に歌いました。音楽には心を1つにする効果があり、カウンセリングやメンタルトレーニングでは音楽療法の応用として用いられます。ウクライナの方々がよく知っている歌を歌うことで、孤独感を和らげ、一体感を味わうことができます。
ウクライナの方々にとってなじみのある歌を歌いながら、ウクライナのきれいな風景などをモザイクアートで1つにしたNFTアートをご紹介させていただきました。1枚1枚の写真は、ウクライナ避難民の方々からご提供下さったもの。そして、これらの風景は今はもう、存在しません。大切な風景を1つにすることで、気持ちを1つにする機会になればと思いました。KAZKAも1枚1枚を味わうようにご覧になっていました。作成者の窪田氏よりご挨拶をいただきました。
みんなで記念撮影を行った後は、ご来場者の方々とKAZKAとの写真撮影となりました。
◆2日目 10月19日 スペシャルライブ
2日目、KAZKAスペシャルライブ。大変多くのご予約をいただいておりました。運営側としては当日の受付がどのようになるか、リハーサルがどこまでかかるかなど、状況を見ながらの対応となりました。ご来場者の皆様にはお待たせしましたが、無事、ホールへの入場を行い、スペシャルライブが始まりました。
空襲警報が鳴り響くウクライナの町や、大統領演説の実際の映像を取り入れたミュージックビデオで、アメリカをはじめ世界でも話題となった曲「I AM NOT OK」、YouTubeだけで4億回以上再生されている代表曲「プラーカラ」をはじめ、伝統的な民謡や国家なども披露されました。
ご来場の皆様は国旗を掲げて踊り、歌い、KAZKAの音楽を楽しんでいました。子どもたちとのセッションもありました。
お帰りの際はステキな笑顔でいらっしゃいました。音楽の力が人の心を元気にし、笑顔を取り戻すきっかけになることを実感したシーンでした。当センターのパンフレットに、KAZKAからのメッセージを入れ、お渡しさせていただきました。
この2日間の「KAZKA来日文化交流会」はボランティアスタッフをはじめ、ウクライナ避難民、在日ウクライナの方々も運営スタッフとしてご一緒につくりました。最後にみんなで写真撮影を行いました。
「KAZKA来日文化交流会」、本当にたくさんの方々がお越しくださいました。外務省、在日ウクライナ大使館のご後援をいただき、直接お話をお聴きする機会をいただけたことは、日本で孤独感を抱え生活しているウクライナの方々にとって、大きな勇気づけになったことと思います。また、たくさんのボランティアスタッフ、ウクライナ避難民の方々、在日ウクライナの方々にもご協力をいただきました。心からの感謝と御礼を申し上げたいと思います。
この2日間でKAZKAから、「私たちがウクライナ語で歌っているのは、ウクライナの文化や言葉を伝えたいからなのです。ただ、この戦争で、それが奪われようとしている。私たちはただ、ウクライナの文化を守りたいだけなのです。」とお聞きしました。「来日してより実感したのは、日本にはとても豊かな文化があり、守り続けている歴史がある。ウクライナへの日本のサポートはとても素晴らしく、ウクライナを応援して下さっていることを心から感謝しています。」KAZKAはその後、訪れた広島でも、「IT COULD HAPPEN IN UKRAINE ACT NOW」という言葉で、これは今、ウクライナで起こっていることであり、広島で起こったことをウクライナで起こしてはならない、ということを全世界に伝えたいとも話されていました。
ウクライナに対する日本のサポートは、ウクライナでも高い評価をいただいています。引き続き、全心連ウクライナ心のケア交流センターとして、ウクライナ避難民の皆様、在日ウクライナの皆様、日本のサポーターの皆様とともに、全心連公認プロフェッショナル心理カウンセラーとしての心のケアを行って参ります。引き続きのご支援、ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。
主催:一般社団法人全国心理業連合会
ウクライナ「心のケア」交流センター在日ウクライナ人スタッフ、ウクライナ避難民
全心連公認プロフェッショナル心理カウンセラー(話を聴くプロ)ボランティアスタッフ
参加人数:
1日目(10月18日)約270名
2日目(10月19日)約570名
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本企画は下記の皆様にご後援、ご協力をいただきました。改めて心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
後援
外務省
在日ウクライナ大使館
一般社団法人プロフェッショナル心理カウンセラー協会
協力
株式会社アイディアヒューマンサポートサービス