虐待やDVなどの福祉分野
児童虐待・DVなどの福祉分野では、民営シェルターやNPO法人などがセイフティネットを担っているのが実態です。医師や学術関連の方々がこの分野で積極的に活動することは限られているのが現実です。
また、この分野では、心に傷を負った児童や女性などに対して、頭ごなしに「治療」という視点を持つのではなく、「受容」という視点から相手を受け入れてコミュニケーションを取っていくことが求められることが多々あります。これは、経験や共感の無い人間にはなかなか担当できるものではありません。
そのため、自らが被害体験を持つ者や、現場に密着したNPO法人の担当者などがカウンセリングのスキルを身につけて心のケアを行う場合が多く、実際にそのような心理カウンセラーが数多く活動しています。
セクシュアルマイノリティの分野
セクシュアルマイノリティは、人口の約5%が該当すると言われています。社会におけるマイノリティであり、日本では偏見や抑圧もありどうしても生きづらく、自殺率が高いのが実態です。
この分野も、医師や臨床心理士が取り組む例は決して多くなく、心理カウンセラーやNPO法人の相談員などが支えている分野です。
他の福祉分野と同様、経験者や体験者でなければなかなかその心の傷をわかってあげられず、効果的な相談ができないという難しさがあります。学会などが存在する分野でもなく、ある意味「現場たたきあげ」の心理カウンセラーの活動が必須と言えます。
心理カウンセラーの存在は必須
こうした福祉分野においては、投薬などの治療よりも、あるいは心が傷を負うメカニズムの解説よりも、なによりもまず、傷ついた心の声に耳を傾け、丁寧に傾聴し、沢山の思いを受け止めることが求められます。
虐待で傷ついた心には、もちろんその程度によりますが、薬による治療よりも、じっくりと話を聴いてくれて安心できる心理カウンセラーの存在が何よりも大切なことが多々あります。
また、セクシュアルマイノリティで悩みを感じている少年少女に相談を受けたとしたら、世間の「マジョリティの常識」にあてはめて「更正」しようとするよりも、本人の現実とマイノリティとしての苦しみをまず理解して受け止め、そこから生き方を模索していくサポートが必要になるでしょう。
福祉分野においては、自らの体験を元に相談者の心に寄り添う心理カウンセラーの存在はとても重要であり、その活動が妨げられるようなことがあってはなりません。